今さらな業界ヒエラルキーの話
A gulf between…

放送業界を少しでも知ってもらおうと始めたTV-projectも開設からはや5年。
その間に、多くの放送関係者がネット上で同じようにブログを開設するようになった。
そうなると
TV-Projectの存在意義も薄れるのだが、そこは個人サイト。
私と編集長が飽きるまでのんびりと続けていくつもりだが、
意外にも、私の周囲で放送の商売を理解している人は少ない。


以前に紹介したように、NHKも含めた現在のラジオ・テレビにおいて
放送局の人間だけで制作している番組は皆無である。
何かしらの形で外部企業の力を借りているのが現状だ。つまり、下請け。

技術を請け負う会社、美術セットを請け負う会社
ロケ車を請け負う会社、そして演出を請け負う会社。
私が働いていたのは、演出を請け負う“番組制作会社”と言うわけ。


TV-project開設当初、私は番組制作会社のADAssistant directorだった。
ご存じの通り“演出補”であって、ご存じの通り
ADとは“見習い兼雑用”
数年の修行期間
AD期間)を経て、一人前のディレクター(演出家)になる。

一人前になると、よく言われる台詞がある。
「タクシー使いまくりなんでしょ?」

「領収書自由に切れるんでしょ?」

「タレントと遊べるんでしょ?」

「給料いいんでしょ?」

んなわけない。それはごく一部だけの世界。


一本数千万から数億円ともいわれる番組制作費には、下請け費用も含まれており、
当然、この金額もコスト削減のターゲットとなる。
そうなると、発注する局と如何に“太い”パイプを“幾つ持つか”で
下請け側の台所事情は変わってくる。
結果的に、放送局を頂点とする業界ヒエラルキーが誕生する。

仕事を増やして収益を上げる下請けもあれば
下請けの下請けや、人材の大量派遣で収益を上げる所もある

しかし、

60分ドキュメント番組の報酬が一本20万円』
『毎日
60分の情報番組にスタッフが約10人だけ』などの厳しい現実の末
(注:目安として取材班を頼めば一回13万、編集所を使えば1時間4万円
月収10万円、残業代・賞与・手当
その他“無い無いづくし”に囲まれた
立派な有名大卒ADが誕生する。


しかし、数年後には辞めていく。
よって、慢性的な人手不足。


そのような劣悪な環境下で追い詰められた現場が、
不祥事を起こした番組は数知れない。
孫請けまで起きている今の状態は、
NHKを含めた各局の対策が急務なのは当然だが
もはや放送局だけで解決できる状態ではない。

下請け側は、各々で業界団体(大半が勝ち組企業の集合体)を設立しているとは言え
不祥事防止の取り組みは、検証こそされども、
対策は放送局よりお粗末なのが現状なのだ。
何のための業界団体なのだか。

格差社会を伝えている放送メディアもまた、格差社会のまっただ中にある。

(2007/10/08)


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