わがまま業界人 |
私事ではあるが、先日久々に仕事を辞めたくなった。まぁ、社会人をやっていると、年に
何度かこう思う時期が来るらしいのだが、この業界でADをやっていると、「辞めたい」の
サイクルが本当に短い。そう思いながら、ホントに辞めちゃう人も後を絶たない。辞める
理由も様々で、「体を壊して、肌が土気色になって戻らない」というものや、「電話応対で
失敗してクビになった」や、「好きな女が地元に戻るのでついていく」などなど。もちろん、
職場の人間関係と言うものも主な理由だ。
…人間関係と言っても、セクハラディレクターや、ワガママディレクターについていけなく
なったというパターンが大半を占めるのだが。
しかも薄給のこの商売。…確かに20代半ばで年収百数十万だったら、バイトしていた方が
ましだと思うよなぁ。
以前にもコラムに書いたが、この業界は、時間が常に変則的かつ朝早くて夜が遅いので、
友達が減りやすい職業故に、気付けば周りの友人は同業者だけになっていたりする。
そのうえ、ADは業界ヒエラルキーの最下層に位置するので、他の人に苦情を申し立てる事
はまず不可能だ。「仕事も出来ない半人前なのに、いっちょまえな事言うな」という考えが
業界の根底にあり、基本的人権すら尊重されない世界なのだ。まさか21世紀になった
この時代で、アパルトヘイトの黒人さんの気持ちを思い知らされるとは思わなかった。
…いや、本当に。
とは言え、ベテランのディレクターさんに言わせれば、近年は少しずつ変わってきている
らしい。さすがにこの様なことを続けては、若い人材が育たないということで、少しずつ環境
は良くなっているとのこと。少なくとも、私のいる報道情報系の番組においては、の話だが。
とは言え、やはり神経が太くないと生きていけない世界に違いはない。
ADの愚痴の代表的なものは、直属の上司であるディレクターの悪口であることが多い。
無論、ワガママ・横暴なディレクターほど矢面に立たされやすい。例えば…
「俺が腹空かせる前に、メシを用意するんだよ!」と怒るディレクターや、
「明日朝までに、素人10人仕込んで」と20時に指示を出すディレクター、
ロケ先で「俺が来るまで場を繋いでおいて」と、二時間も遅刻するディレクター、
「この前取材した人に記念品送っておいて」と、予算も品物も指示せず失踪するディレクター。
…愚痴るワケではないが、この様な方々の下で黙って働くのがADである。
しかし、そんなADとディレクターの唯一の共通点は、外部の制作会社から派遣されている
スタッフであると言うことだ。即ち、局側からすればただの"契約社員"である。
この秋の改編で、うちの番組でもスタッフの異動があり、とあるADが辞めることになった。
きっかけは、小さな不祥事が原因だったが、現場からしこりを取り除きたいという上の思惑は
明らかだった。誰しも、原因となった不祥事が局員がやったものだったら、結果は変わって
いたかも知れないと、感じていた。所詮は契約社員、
足軽兵の如く扱われてしまうという悲しい現実である。
彼が辞めるとき「辞めたいと思っても、辞めないでくれと言われる人になってくれ」という
言葉が印象的だった。
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